旅する大理石 ギリシャから中国へ(BS世界のドキュメンタリー)

原題:A Marble Travelogue

 

 

中国において近代化の象徴として用いられる大理石。

世界における大理石の6割を、中国が輸入しているという。

そもそもなぜ「大理石」と言うのかと思って調べてみると・・・

 

「中国雲南省大理県に産するものが有名であるところからいう」

日本国語大辞典

 

美しい映像を背景に、人とモノとカネが交差するギリシャ中国間の大理石ロードの人間模様を描く。流ちょうな中国語を武器にビザの斡旋や観光ビジネスを展開するギリシャ人双子姉妹、有名な彫刻のコピーを大量生産して財をなした中国人男性、中国から世界各国へ輸出される土産品の工場、エーゲ海の島でその土産品を購入する裕福な中国人夫婦など。

NHK Webサイトより)

 

「中国から世界各国へ輸出される土産品の工場」というのは、海外で手にとる土産物の多くが中国で作られているのを目にするので意外でも新鮮でもない事実であるはずなのだが、その工場の経営者や商品を作っている少女の話を聞いた途端、市場原理の裏にある奇妙な「物語」が見えてくる。ギリシャからの石で作ったギリシャの土産物を生産する工場の経営者はギリシャに行ったことはないし、土産物に彩色している少女は自分が手にする土産がどこのものだかも分からない。「わかるのはニューヨークだけ」で、「行ってみたいのはパリ」。大学にも行ってみたい、と語る少女。しかし、こうした工場における人件費の高騰は機械化を促し、生産拠点も海外へと移転するかもしれず、大量解雇も時間の問題という。

 

インフルエンサーとして活動していると冒頭で紹介されたギリシャの双子姉妹。彼女たちの本業は、中国の富裕層にギリシャのマンションを販売すること。ギリシャ政府は、25万ユーロ以上の不動産を購入した者に「ゴールデンビザ」を発行。2018年、中国人がギリシャに投資した額は5億3000万ユーロ超。チャイナマネーをあてにしなければ立ち行かなくなる状況は、日本にも確実に当てはまりつつあるように思われる。

 

ギリシャで結婚式を挙げた新婚カップルは、土産物店で中国産の土産を買い、再び中国へ戻る。彼らの新居であるマンションには大量のギリシャ大理石が使われている。「国籍」のないモノの動きにこそ、国際情勢の内情を読み取るべきかもしれない。

 

(2022年10月27日15:00放送、初回放送は2022年7月21日)

 

A Marble Travelogue (2021) - IMDb