2022-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『時の中の自分』外尾悦郎

『時の中の自分』外尾悦郎(道友社、2022年) この本の内容は、2019年12月に天理大学で行われた講演が元になっているのだが、外尾氏は同大学の客員教授であるらしい。また、この本の出版元も天理教関連の書籍を発行している天理教道友社。ただ、講演内容に天…

『パシフィクション』アルベルト・セラ

原題:Tourment sur les îles 監督:Albert Serra 東京国際映画祭にて鑑賞。 日仏学院(現在のアンスティチュ・フランセ東京)でアルベルト・セラの作品を初めて観たのは、もう10年前になる。(2022年の2月だった) フランス語字幕で観た『騎士の名誉』と英…

この通りはどこ? あるいは、今ここに過去はない(ジョアン・ペドロ・ロドリゲス、ジョアン・ルイ・ゲーラ・ダ・マタ)

原題:Onde Fica Esta Rua? 監督:João Rui Guerra da Mata、João Pedro Rodrigues 東京国際映画祭で鑑賞。 パウロ・ローシャ『青い年(Os Verdes Anos)』をめぐるドキュメンタリー。 同作は、日本で劇場公開された初めてのポルトガル映画らしい。(1980年…

鬼火(ジョアン・ペドロ・ロドリゲス)

原題:Fogo-Fátuo(英題:Will-o'-the-Wisp) 監督:João Pedro Rodrigues 東京国際映画祭(2022)にて鑑賞。 ジョアン・ペドロ・ロドリゲスのレトロスペクティブが企画され、クラウドファンディングに参加して、アテネフランセ文化センターでの上映に心躍り…

李禹煥(国立新美術館)

国立新美術館開館15周年記念 李禹煥 Lee Ufan 2022年8月10日〜11月7日(国立新美術館) 2022年12月13日〜2023年2月12日(兵庫県立美術館) 展覧会図録に収められている李自身の文章「見ることの身体的陽性」の中に、次のようなエピソードが紹介されている。 …

『石が書く』ロジェ・カイヨワ

『石が書く』ロジェ・カイヨワ(菅谷暁訳、創元社、2022年) 本書には、パスカルの『パンセ』から次の一節が引用されている。 「現物を賛嘆することはないのに、それに似ていることによって賛嘆を引き寄せる絵画とはなんと空しいものか」 この一節が本書の語…

『フランス』ブリュノ・デュモン

「映画批評月間 Vol.04 フランス映画の現在をめぐって」にて鑑賞 (会場:ユーロスペース) ブリュノ・デュモンがレア・セドゥを主演に映画を撮るという事実自体が既に興味深いのだが、実際に見てみると、「スター映画」の変化球としての居心地の悪さ、社会…

『秘密の森の、その向こう』セリーヌ・シアマ

私も少しまえに身内が他界したこともあって、母を亡くした母親の方に自分の感情が向かいながら見はじめる。身内の死はまさに、身の内に大きな欠落が起こる喪失感であり、自分の一部(感じ方によっては半分、それ以上)が失われるような感覚になる。その要因…

『ブリュノ・レダル、ある殺人者の告白』

原題:Bruno Reidal 監督:ヴァンサン・ル・ポール(Vincent Le Port) 「映画批評月間 Vol.04 フランス映画の現在をめぐって」にて鑑賞 (会場:ユーロスペース) 共感や感情移入のみが作品受容の原動力になってしまうのは、文芸を嗜むうえで至極残念な態度…