池田亮司「data.gram」(TARONASU)

会場:TARONASU(入場無料)

 

池田亮司「data.gram」(TARO NASU)|美術手帖

 

東京都現代美術館での個展「the infinite between 0 and 1」(2009)を見たことがあり、その時に味わった独特な感覚がいまでも記憶に残っている。同展では音と光によって包まれた空間そのものが放っているアウラのようなものに身を委ねた気がするが、本展はギャラリースペースに並んだディスプレイと「対面」することで起ち上がる、よりパーソナルな「対話」を試みるように導かれる。

 

「あえて」なのか、場内は普通に明るいので、ディスプレイのなかの「宇宙」に集中しなければならない。際立って提示される別次元は、現実における認知とは完全に別のスケールで捉えられた世界であるはずなのに、その無機性ゆえにより普遍的に思えてしまう。個体の個別性をすべて排したところに浮かび上がってくる、世界の本質たる実相が展開されているように思えてくる。自然が神による数式で出来ているのだとすれば、このようにして広がり、繰り返されているのかもしれない。そう思えて来る。

 

画面の極めて限定された平面スペースが、その奥にある空間と時間へ誘う不思議。物質としてそこには無いそれらに視覚と思考が向かうとき、即物的に徹したかのような粒子の連鎖が紡ぐメロディーとリズムとハーモニーを感じているのは一体、私の「どこ」なのだろう。デジタルと細胞が共鳴することを感じたとき、すべては自然の一部なのだということを識ることになる。