書籍

『ビッグ・イン・ジャパンの時代』(BURRN! 叢書 29)

『ビッグ・イン・ジャパンの時代(BURRN! 叢書 29)』 (シンコーミュージック・エンタテイメント、2022年) 雑誌『BURRN!』編集部員の幅由美子が、同誌編集長の広瀬和生にインタビューする形式。最初(第1章 総論)と最後(第13章 総括)で90年代を中心と…

『映画を早送りで観る人たち』 稲田豊史(光文社新書)

『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ——コンテンツ消費の現在形』 稲田豊史(光文社新書、2022年) 基本的な疑問を多角的に掘り下げ、考察している。論理的でありながら、個人的な感情なり信条なりも反映させつつ書かれているため、納得のみな…

『ファミリア・グランデ』カミーユ・クシュネル

『ファミリア・グランデ』カミーユ・クシュネル(土居佳代子訳、柏書房、2022年) 本書には冒頭に「訳者まえがき」がある。(私は「訳者あとがき」から最初に読む癖があるので、物理的位置に関わらず前もって読んでいただろうが。)そこでは、本書の出版時(…

『氷の城』タリアイ・ヴェーソス(国書刊行会)

『氷の城』タリアイ・ヴェーソス (朝田千惠/アンネ・ランデ・ペータス訳、国書刊行会、2022年) 20世紀ノルウェー文学を代表する作家・詩人であるタリアイ・ヴェーソスは、ノーベル文学賞に30回もノミネートされたという。初めて読む私はその情報に畏れ構…

『この道の先に、いつもの赤毛』アン・タイラー

『この道の先に、いつもの赤毛』アン・タイラー (小川高義訳、早川書房、2022) よく出来た小説を読むと、“普通の人”というのは「神話」の登場人物に過ぎないということがよくわかる。“普通の人”というが、「平均の集合体」であるとするならば。 よく出来た…

『マザリング・サンデー』グレアム・スウィフト

『マザリング・サンデー』グレアム・スウィフト (真野泰訳、新潮クレストブックス、2018) 27日公開の映画『帰らない日曜日(原題:Mothering Sunday)』の原作。主人公をオデッサ・ヤングが演じ、その相手役をジョシュ・オコナー(『ゴッズ・オウン・カン…

『善人たち』遠藤周作

遠藤周作没後25年にあたる2021年の12月、彼の未発表戯曲三本が発見されたことが発表された。いずれも1970年代後半の執筆と目される三本を収録し、単行本として刊行された。 「善人たち」の舞台は、日米開戦が間近いアメリカ・ニューヨーク州のオールバニイ。…

『教養としてのデニム』藤原裕

『教養としてのデニム』藤原裕(KADOKAWA、2022) 著者名を見て一瞬、藤原ヒロシ?と思ってしまったが、その名は「ふじわらゆたか」と読むそうだ。原宿の老舗古着屋「BerBerJin(ベルベルジン)」のディレクターを務めているとのこと。 書名の「教養としての…

『乾いた人びと』グラシリアノ・ハーモス

『乾いた人びと』グラシリアノ・ハーモス(高橋邦彦訳、水声社、2022) ブラジル映画の新しい潮流「シネマ・ノーヴォ」の映画作家ネルソン・ペレイラ・ドス・サントスによる『乾いた人生』(1963)の原作。映画の方は以前アネテフランセでの上映時に観たこと…

『チェインドッグ(死刑にいたる病)』櫛木理宇

『チェインドッグ(死刑にいたる病)』櫛木理宇(早川書房、2015年) フィクションを享受するためには共感や感情移入が必要だと言われるし、たしかにそれらが実際に享受しやすくさせもする。ところが、犯罪者を扱ったフィクションが膨大に算出される現今下、…

『編集者とタブレット』ポール・フルネル

『編集者とタブレット』ポール・フルネル (高橋啓訳、東京創元社、2022年) 変わりつつある出版界。紙の本は消えるのか? 読者は何を求めるのか? 古きよき時代の編集者が直面する時代の荒波。彼の驚きと哀しみと当惑はすべての出版人と読書人アルアルとい…

『フォンターネ 山小屋の生活』パオロ・コニェッティ

『フォンターネ 山小屋の生活』パオロ・コニェッティ (関口英子訳、新潮社、2022) 30歳になった僕は何もかもが枯渇してしまい、アルプスの山小屋に籠った。都市での属性を解き放ち、生きもの達の気配を知り、五感が研ぎ澄まされていく。世界的ベストセラー…

『異常[アノマリー]』エルヴェ・ル・テリエ

『異常[アノマリー]』エルヴェ・ル・テリエ(加藤かおり訳、早川書房、2022) 2020年夏にフランスで刊行され、同年度のゴンクール賞にも輝いた本作。2021年12月の時点で110万部を突破しており、ゴンクール賞受賞作で100万部突破は『愛人[ラマン]』(マグ…

『映画はいつも「眺めのいい部屋」  政治学者のシネマ・エッセイ』村田晃嗣

『映画はいつも「眺めのいい部屋」 政治学者のシネマ・エッセイ』村田晃嗣 (ミネルヴァ書房、2022) 本書のカバー袖にある紹介文は以下の通り。 「映画をあまり見ていない読者に向けて、政治との関わりを手掛かりに映画の楽しさと奥深さを伝える。新旧の映…

『その他の外国文学』の翻訳者

「『その他の外国文学』の翻訳者」白水社編集部(白水社、2022) 「その他」という言葉は、必ず主たる何かを意識させる響きであるゆえに、どこか疎外感をおぼえもする。しかし、それは必ずしも単なる支流でもなければ、ましてや主流にふりまわされる傍流だと…